楽しかった時、辛かった時に聞いた曲や景色。
不思議と心のどこかにあるものですよね。
私は夏になると思い出す花の1つに「月下美人」があります。
私の両親は植物大好き。
生き物も大好き。
好きといっても、育てる広いスペースが無い小さな長屋。父は色々と工夫していました。
植物は板を重ねて棚にして、サツキや種から育てた何年物、分けてもらった株などを。生き物はめだか、鈴虫、文鳥、など。
植物も生き物も愛情いっぱい。
両親は増えた鈴虫、株分けしたサツキや球根をご近所へ分けていました。
子供の頃、植物と生き物がいつも近くにある家庭環境だったのです。
そんなある夏の夜。
「月下美人」が咲いたー!
両親が嬉しそうにはしゃいで、私と姉を外に呼びました。
私は眠い目をこすりながらしぶしぶ外に。眠くて眠くてあまり気乗りしなかった。
明日の朝のラジオ体操の事を考えていたのです。
(当時小学生だった私は、夏休みの課題として、朝に学校にラジオ体操しに行き出席スタンプを押してもらわないといけなかった。今もそういう習慣ってあるんでしょうか。)
半分面倒に思いながらも外へ。するとご近所さんまで来ていて両親と嬉しそうに話してる。
何がそんなに嬉しいの・・・
お花をのぞいて、その美しさに息をのみました。
夜に大輪の白い花が1つ。
まさに月下の美人。
ゴージャスなのに上品。
夏の夜、ふわっと浮かび上がる妖艶な姿。
例えて言うなら天女の羽衣・・・か。
見たこともない美しさに、惹きつけられたのでした。
なかなか咲かず、開花は夜。
すぐにしぼんでしまうから咲いた時の喜びが大きいと言われています。
両親が他界した今。
「月下美人」と聞いただけで当時の笑顔の両親とあの妖艶な大輪花を思い出します。
2軒長屋の借家も懐かしい。当時は高度成長期で希望にあふれた良き時代でした。
きっと今も、後になって思い出す曲や景色があるのかもしれませんね。
名前は、真夜中に美しい花をつけることから。
昭和天皇が皇太子時代の1923年に台湾を訪れたときに、「この花の名は?」と質問をなされ、隣におられた時の台湾総督が 「月下の美人です」と答えられたことから この名が定着したともいわれているそうです。
引用:こぼんさい/月下美人
photo by 緑の風yamashoku