球根植物とは
球根植物は多年草の一種。根、葉、茎の一部に養分を貯えて育っていきます。ヒヤシンスの水栽培で成長の過程を御覧になった方も多いのではないでしょうか。
養分を貯える部分によって、鱗茎(りんけい)、球茎(きゅうけい)、塊茎(かいけい)、根茎(こんけい)、塊根(かいこん)に分けられています。根が肥大化した「塊根」、それ以外全てを「地下茎」として分ける場合もあります。
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◆鱗茎(りんけい):茎が短縮して葉が多肉になったもの
・チューリップ・スイセン・ユリ・タマネギ
◆球茎(きゅうけい):茎が肥大して球形になったもの
・グラジオラス・フリージア・アヤメ・サトイモ
◆塊茎(かいけい):地下の茎の先端が肥大したもの
・カラジウム・アネモネ・シクラメン・ジャガイモ
◆根茎(こんけい):地下茎が肥大したもの
・カンナ・ハス・ショウガ
◆塊根(かいこん):根が肥大したもの
・ダリア・サツマイモ
球根を植える時期

同じ植物名の球根でも、夏に休眠する種類と冬に休眠する種類があります。添付されているラベルや説明書きの生育温度や特徴をチェックしましょう。例えば生育期に植え替えたり、耐寒性のない種類の球根を寒さに当てしまうと球根が痛んで、花が咲かない事があります。
春植え球根




原産地のほとんどが熱帯から亜熱帯地方。耐寒性はあまりありませんが、植えっぱなしでOKな球根も多いので球根を初めて育てる方におすすめです。一般に暖かくなってきた3月から6月頃に植え付け。夏から秋に咲き、冬は地上部が枯れて休眠をします。
夏植え球根
原産地のほとんどが温帯原産。耐寒性が強いので寒さを気にせず扱えます。7月から9月頃に植え付けた後、1か月程度で花が咲き、翌春に葉が枯れて休眠をします。植えつけてからすぐに花を楽しみたい方におすすめです。
例)土を使わずに籠に乗せるだけで花が咲く コルチカム(ウォーターリリー)
秋植え球根




原産地の多くは温帯なので耐寒性があります。基本的に寒さに当てることが大事になりますが、南アフリカ原産の場合は寒さに弱い種類もあります。生育温度はチェックしましょう。10月頃に植え付けた後、翌年の春に開花して6月頃から休眠します。
pick up◆ムスカリの葉が伸びすぎないようにする植え付け時期
ムスカリは葉を長く伸ばして成長する植物です。数本程度ならば剪定しても問題ありませんが、栄養を貯える大事な役割があるのであまりおすすめしません。
葉をなるべく短く育てたい場合は、初秋よりも秋が深まった10月下旬ころに植え付けます。あまり寒くなりすぎない時期を狙いましょう。翌年も楽しみたい場合は葉が黄色っぽくなった6月頃に彫り上げ、涼しい場所に保管しておきます。
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球根を植える場所と植え方
基本的に日当たりが良い場所で育ちます。水はけの悪い場所では腐ってしまうことがあります。鉢植えの場合でもメリハリのある水やりをします。
植え付け間隔は直径の約3倍、深さは厚みの2倍が一般的な理想です。大きな球根は広く深く、小さな球根は狭く浅く植えるようにしましょう。
ただし全てがこの限りではありません。例えば、植え付けた後で大株になるダリアは間隔を広くとり、アマリリスは大きな球根ですが浅植えで育てます。ユリは球根の上にも根が出るので深く植え付けます。(以下の図は地植え例)
球根を植える深さの比較

植え付け後の手入れ
追肥は3回与えると新しい球根の充実に繋がります。1回目は芽が出そろった時、2回目は蕾が出る前、3回目は花が咲き終わった後です。
1回目、2回目は窒素(葉・茎の成長を促進する)の多い肥料を与え、3回目の花後はカリ(茎・根を丈夫にし、暑さ寒さや病害虫の抵抗力を高める)の多い肥料を与えると良いでしょう。3回目の花後追肥は特に大切です。
花が咲き終わると、地上部には葉が残りますが枯れるまで放置しておきます。養分が貯える大事な役割があるのでそっとしておきます。
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鉢植えで球根を育てる
常に湿り気がある状態で育てると腐ってしまいます。水はけの良い用土を使い、腐葉土を多めに混ぜ込みます。
植え付けの深さと個数
鉢植えの場合は土の量が限られているので、地植えと違う深さで植え付けます。基本的に浅植えです。根の張る余地を確保するため、鉢全体の深さの中心よりも上に球根が来るようにします。
小型の球根は3.5号から4.5号鉢へ3~5球、中型の球根は4.5号から5号鉢に3球。大型球根は7号から10号鉢に1球植えにとどめます。なお、翌年も楽しみたい場合は密集して植え付けず、球根通しの間隔を持たせます。
▼小型の球根植え付け例~クロッカス~

上画像のように、球根の先端が見える程度に植える代表例として、チューリップ・ヒヤシンス・スイセン・クロッカス・アネモネがあります。ユリ・ラッパズイセンは球根の上に3cm以上用土がかぶるように深く植え付けます。
なお、フリージア・バビアナ・イシキアなどは成長してくると倒れやすいので、芽が出たら用土を足して増土をします。そのために最初に植えこむ時には鉢全体の2/3程度位まで(ウォータースペースが深い状態)に土がくるようにとどめます。
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球根の大きさ別による鉢サイズ目安
◆小型球根:3.5号~4.5号(直径12cm程度)の鉢へ3~5球
・クロッカス・ムスカリ・アネモネ
◆中型球根:4.5号~5号(直径15cm程度)の鉢へ3球
・チューリップ・ヒヤシンス・グラジオラス
◆大型球根:7号~10号(直径30cm程度)の鉢へ1球
・ダリア
与える肥料と時期
鉢植えの場合、植え付けのときに肥料は使いません。最初の肥料は植え付けてから馴染んだ頃の1週間後くらいに、緩効性(ゆっくり効果が現れる)肥料を与えます。
その後は地植えと同じで3回。芽が揃った時、蕾が出る前、花後にカリ(茎・根を丈夫にし、暑さ寒さや病害虫の抵抗力を高める)の肥料を追肥します。
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◆緩効性(かんこうせい)肥料とは
ゆっくりと効果が表れる肥料。根が肥料焼けを起こしにくい。植え付けの時に土に混ぜたり、成長してから土の上に乗せて追肥するときにも使います。粒のタイプは大きさが色々あるので植える鉢に合わせて選びます。その中で主に有機質を使ったものを遅効性(ちこうせい)肥料とも呼びます。
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鉢植えでの水やり
完全に乾いてしまうと良くありません。少し乾きだしたらたっぷり水やりをします。葉が枯れ始めたら休眠期に入るので、水やりを控えましょう。
水栽培で芽出し球根を育てる
秋植え球根のヒヤシンスを水栽培される方も多いかと思いますが、流通時期が短いので購入を逃してしまうことがありますね。そんな時は、1月~2月ころに花や芽が出ている状態(芽出し球根)で販売されている苗を育てるのも良い方法。
▼芽出し球根

この時期に芽が出ている球根鉢は、冬に咲くように温室で育てられたものがほとんどです。お花を楽しむコツとして、芽だけが出ている場合は寒さに当てます。既に花が付いている場合は、そのまま2~3週間室内でOK。
芽出し球根の簡単な水栽培方法
根をやさしく洗い、コップに入れるだけでワンシーズン楽しむことが出来ます。コップの底に根腐れ防止にミリオンAを並べ、砂利を置き、その上に球根を置くと良いです。根だけに水が当たるようにしましょう。
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◆ミリオンAとは
珪酸塩白土(けいさんえんはくど)です。水質を浄化して根腐れを防止します。植物にミネラルを供給して生育を促進。水栽培のほかに、鉢底に穴のない器や水苔で育てるときにも威力を発揮します。

鉢や容器を使わない栽培方法
(2月上旬 東京都)
上画像のように麻布や麻紐を使って空中で育てても可愛らしいです。水に浸して柔らかくなった水苔を軽く絞り、球根の根を優しく包みます。この場合も根だけに水分が当たるようにします。水苔の底にミリオンAを少々使うと安心です。
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球根から育てる楽しさ

球根は芽が出る喜び、季節を感じられるところに魅力があるのではないでしょうか。寒い季節に水栽培でお部屋で育てられるのも嬉しいですね。
土を使って屋外で育てる場合、ほとんどの球根が日当たりと水はけの良さ、追肥が大事になります。そして同じ名前の植物でも植え付ける季節によって耐寒・耐暑温度が違います。球根に合った温度や特徴の確認をしましょう。
数年植えっぱなしOKな球根でも、放置すると養分を貯えられずに痩せていきます。その場合は彫り上げて分球して植え付けます。
原産地と同じ環境ではない日本ですから、愛情込めて育てていても期待どおりの結果にならない事も多いです。いかに養分を貯えられるかによりますし、個々の生命力でばらつきもあります。次のサイクルは楽しむ程度に捉えましょう。