植物の増やし方は色々ありますね。難しそうな印象ですが実は簡単。「挿し木」の成功率をグッと高くするためのコツを紹介します。
挿し木(挿し芽)は難しい?簡単?やり方は?
今回は「挿し木」の時期・使う枝や葉、土や道具のポイント、日当たりや水加減などについて触れていきます。
私が毎回挿し木で使っているメネデールや発根促進剤ルートンもご紹介。挿し木(挿し芽)の手助けをしてくれます。
「挿し木」とは
「挿し木」とは植物を増やす方法の1つのこと。
増やす方法としては「挿し木」の他に「つぎ木」「株分け」があります。実際に植え込みをされている方は「株分け」が一番身近ですね。
この中で、今回取り上げた方法が「挿し木」。挿し木を「挿し芽」と呼ぶ場合がありますが、この記事では「挿し木」とします。
代表的な「挿し木」方法は3種類
「挿し木」は主に以下3つの挿し方があります。
- 天挿し
- 茎挿し
- 葉挿し
発根促進剤ルートンの取扱説明書から図をお借りしました。
この他「根挿し」もあります。ユニークなのは「葉挿し」です。葉の断面から根が出て、しっかり成長していく変化はとても楽しい。ベゴニアの葉が分かりやすい例です。
これらは全ての植物に通じるものではなく、その植物に合った挿し方があります。
いつ、どの枝や葉をどんな風に、どう挿すかでも成功率が変わってくるのです。
挿し木の時期と使う枝葉
いつ、どんな枝を使って挿すの?というのがいちばん気になるところです。
これは植物によってバラバラ。
「庭木・花木」、「観葉植物・草花」それぞれ見ていきましょう。
庭木・花木の挿し木時期
- 春挿し(休眠挿し):休眠している落葉樹に限って行う。冬に挿し穂を採って地中に埋め、春に挿し木をする
- 梅雨挿し(緑枝挿し):新枝がまだ緑色の葉を残しているうちに、新芽や新枝を挿す
- 夏挿し:常緑広葉樹に。7~8月に挿す
- 秋挿し:常緑広葉樹に。カナメモチやツバキなどは9~10月頃に挿すと翌年伸びやすい
根が出たら(発根)、早めに鉢から出して移植する方が根がつきやすいですが、冬に向かう時期は春まで待ってから移植します。
観葉植物・草花の挿し木時期と選び方
時期
観葉植物の場合、失敗が少ないのは5~7月ころ。草花もほぼ同じですが、必ずしもこの時期というわけではありません。
共通して言えるのは冬は挿さないこと。
どの枝を使う?
挿し木をする枝をどんな風に選ぶか、ちょっと迷いますね。
例えばバラは節を2~3か所残して切ります。将来、節から芽や葉をのばしていくことになります。この時、葉のついた枝は1つで十分。
葉が沢山あると葉に養分をあげようと頑張ってしまいます。根を出す事にエネルギーを集中させましょう。
以下は発根促進剤ルートンの取扱説明書から。
- アイビー:5~6月。茎を2~3節で切り取って使用
- インパチェンス:5~10月。10cm前後の茎を使用
- カボック:5~8月。天挿し、茎挿しもできる
- キク:5上~7月。大輪菊は5月、天挿し。茎挿しは充実した茎を使用
- クレマチス:6~8月。茎を1~2節つけ、節下で切り取り使用
- コリウス:5~8月。充実した茎を使用
- シャコバサボテン:4~5月。茎を2~6節で切り取り、切口乾燥後使用
- ゼラニウム:4上~6中、9~10月。茎の先4~5節で切り取って使用
- セントポーリア:5~9月。茎挿しの場合は親株より切り取り、葉挿しは葉柄2~3cmつけて使用
- ブライダルベール:6~8月。5~10cmの茎を使用
- ベゴニア(四季咲き):5~6、9~10月。蕾を持たない茎を使用
- ベゴニア(レックス):5~6、9~10月。葉挿し、葉脈にそって切る
- ペチュニア:5~8月。茎の先4~5節で切り取って使用
- ペペロミア:5~6月。充実した茎を使用。葉挿しもできる
- ポトス:6~8月。茎を2~3節で切り取って使用
- マリーゴールド:5~8月:脇芽または充実した茎を使用
- リンドウ:5~8月:茎の先4~5節で切り取って使用
例えばミニバラの場合
ミニバラはとっても簡単です。ポイントは以下の通り。
- 時期:2~3月、6~7月、9~10月ころ
- 春は前の年に出た枝、夏と秋は今年充実した枝を挿す
- 病気になっていない元気な枝を選ぶ
- 節を2~3か所残す
- 太い枝:発根したあとの成長が早いが発根が難しい
- 細い枝:まずは発根!という場合に選ぶ
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簡単!ローズゼラニウムを挿してみよう
切り花でも手に入るローズゼラニウムは、蚊をよける効果があるので、挿し木で増やしてベランダに置くのもオススメ。葉からも良い香りがします。
4月~6月頃に挿して、夏の蚊除け対策に備えられます。
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挿し木の土や道具のポイント
土も道具も、清潔なものを使うことが大事です。
挿し木に使う土
以下のように、色々な方法があります。
- ジフィーセブン
- 挿し木用の土
- 細粒の赤玉土
- 細粒の鹿沼土
- 作りたての配合土
ジフィーセブン
種まき・挿し木専用の土ポット「ジフィーセブン」はとても便利です。
水を含ませると、土ポットが出来上がり。挿し木をして発根したら、そのまま鉢に植え付けが出来ます。種まき用、挿し木用、色々な種類が出ています。
挿し木用の土
挿し木専用の土を使うと手軽で安心。肥料がはいっていない、清潔で水はけの良い土です。小袋でも販売しているので、試してみるのも良いでしょう。
ですが、挿し木だけに使うと、余らせてしまうかもしれません。土を余らせたくない!とう場合は、赤玉土や鹿沼土の小粒を選ぶと良いでしょう。
細粒の赤玉土
挿し木以外でも活躍するので、細粒(小粒より細かい)が1袋あると便利。
多肉植物、ミニ観葉、水はけが悪い小鉢の土をリニューアルさせたりと登場が多い土です。
赤玉土は、通気性・保水性・排水性・保肥力に優れた基本の用土。赤玉土をベースに、パーミキュライトや腐葉土などを足して園芸用の土ができます。
細粒の鹿沼土
ツツジや欄に使うのなら、酸性が強い鹿沼土の細粒(小粒より細かい)がおすすめです。
鹿沼土は、関東ローム層で採取できる軽石で雑菌をほとんど含みません。サラサラしていて吸水性が良く、とても使いやすい土です。
作り立ての配合土
清潔な用土を混ぜて、自分で配合する方法です。
園芸用土として色々な土がブレンドされている土ではなく、赤玉土、腐葉土、パーミキュライト・・・といった土をそれぞれ購入し、自分で配合している場合は、清潔な土でチャレンジしてみるのも良いでしょう。
清潔で、通気性・保水性・排水性があればOKです。
清潔なナイフやハサミを使う
使う刃物はよく「消毒」してから使います。
植物には目に見えないウィルスがいて、知らないうちに挿した枝にもうつしてしまう事があるのです。簡単なのは、沸騰したお湯に数分つける方法。しっかり水分を拭き取れば錆びません。
そして、枝を切るときには、斜めにスパッと。
植物の組織を壊さないように切れ味の良いものを。根を出すことにエネルギーを使ってもらえるよう、余計な負担を減らします。
私が花屋で愛用していたハサミは、坂源ハンドクリエーションの花ばさみです。
毎日、水やお湯が付いた茎や葉を扱うので、刃先が常に濡れますが錆びませんでした。グットデザイン賞だけあって手にフィット。軽くて、切れ味が良い!
何度もオススメしている花ハサミです。
挿し木も育成も活力を与える「メネデール」
挿し木をするとき、特におすすめしたいのはメネデールです。(詳細は後述)
注意点としては、多肉植物やサボテンには使いません。これらの植物の場合は、切口を乾燥させないと腐ってしまうからです。
使い方の例を1つ紹介します。
以下は四季咲きバラ「ラフランス」の枝。
▲3月頃。昨年伸びたバラの枝
上画像のように、切口を2~3時間以上つけてから挿すと成功率がアップします。時間があるようでしたら2~3日付けておき、節から小さな芽が出てから挿すと一層安心。
メネデールが無い場合でも、十分に水分を吸わせることが成功のコツです。
メネデールは、私が植物を育てるのに欠かせない存在。茎はピン!葉は濃く艶々。肥料とは違うので手軽さがあります。
▼無色透明無臭。1リットルの水にキャップ1杯が標準使用です。
メネデールは化学物質を使わない園芸活力素です。肥料や農薬ではないので、手軽に使えます。
良く吸収され、根の成長部分の生育を助けると同時に、光合成を活発にする作用があります。植物の切り口や、傷ついた部分を膜のようなもので保護して、水分や養分を吸収する細胞膜の代わりをします。
サイズは200mlから20L。大容量なほどお得です。おすすめは2L。持ち手が上についていて注ぎやすく、安定性がある形のため保管が楽です。
挿し芽以外にも、週に1度ほど水やりで使うと葉艶も良く元気に育ちます。切り戻しした苗、季節の変わり目、植え替え後・・・と何かと使えます。
根を出す手助け「発根促進剤ルートン」
3cmぐらい濡らした茎の切口に、ほんの少しまぶして挿すだけ。根を出すお手伝いをしてくれます。成長を早めて、水分や養分を吸収する細胞膜の代わりをします。
必須なものでは無いのですが、実際に使ってみるとやはり発根の確率はあがる!と手ごたえを感じています。
先ほどご紹介したメネデールでとダブル使用がおすすめです。
成功率をあげる!挿し木の仕方はとても簡単
- 挿し木の切口をメネデール又は水に2~3時間以上浸す
- 清潔な土を器や鉢に入れる
- 土を十分に湿らせる
- 割りばし等の棒で土に穴をあける
- (発根促進剤(ルートン)を切口に軽くまぶす)
- 穴に挿し木を挿し、ぐらつかないよう茎元を押さえる
- 風が当たらない日陰へ置く
挿すポイントとして以下3つは特に大事です
- 挿し木に水分を吸わせる
- 土を湿らせておく
- 切口に土を触れさせる
せっかく挿しても、切口に土がしっかり触れていないと根がはれません。挿すだけではなくて軽く押さえることを忘れずに。
発根促進剤(ルートン)をつけても発根しない場合、穴をあけずに挿した又は付けすぎが原因なことがあります(経験あり)。説明書をよく読んで使いましょう。
挿し木の日当たりや水加減
- 明るい日陰で育てる
- 直射日光に当てない
- 風に当てない
どの枝にも共通して言えることは、挿して間もない枝は水分を吸い込むチカラが弱いということ。
十分に気を付けても枯れてしまった場合は、選んだ枝の生命力がもともと弱かった、水加減を間違えたなど他の原因も考えられます。
誤解しやすい点として「明るい日陰」=日当たりが良い場所ではありません。柔らかい陽射しがなんとなく入る場所の事です。薄暗い締め切った部屋では光合成出来ませんから「明るい」を補足して付けました。日陰にも色々ありますからね。
挿す季節は優しい気候がほとんどなので、2~3日して落ち着いたら日当たりが良いカーテン越しでも大丈夫ですが、完全に根がつくまでは注意です。強い陽射しがある時には窓から離します。
穏やかな曇りの日は、ベランダに数時間でも出したいと思う時があるかと思いますが、その時には風に当てないように見守りましょう。
水加減のポイント
- 根が出るまで乾かさない
- 常にジトジト濡らしておかない
- 液体肥料はあげない
種まきのように常に湿らせておくと、根を出そう!と頑張ってくれません。根を伸ばすのは空気や水分を求めているからです。
とはいえ、まだ赤ちゃんですから、いつもの花苗の水やりの要領では失敗します。根が安定しない状態で土が完全に乾くと枯れてしまいます。
指で土の表面を触ってみて、乾いてきたな・・・と思ったらそっと水やり。底からあふれるくらいあげて、受け皿のお水は必ず捨てます。
液体肥料はあげず、水だけで育てます。
挿し木の鉢上げ(植え替え)タイミング
- 鉢上げ(植え替え)まで挿し木を抜かない
- 少なくとも1か月は見守る
挿し木をして、いつまで挿し木用の鉢に置いておけばいいのか迷うところですね。
順調にいくと数日で節から小さな葉や芽が出てきます。1週間くらいすると、根が出ているか様子を見たくなってきますがグッと我慢。ここで抜いてしまうと失敗する可能性が大きいです。私も何度も失敗しました。
植物の種類や環境によりますが、少なくとも1か月は見守りです。
植え替えるときにも、根をチェックしたくなりますが触らないように。根を確認せず、そのまま包んで植え替えましょう。
枯らしたくない植物の保険として、挿し木をしておくのもオススメです。
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