ガーデニングの入門編として育てやすいのが一年草(一年生草花)です。種子(タネ)から発芽して、開花、結実後に枯れて一生を終えるサイクルが1年のものをいいます。
それでは一年草について詳しく見ていきましょう。
一年草(一年生草花)とは
種子から発芽する時期は大きく分けて春と秋。近年の気象は本来とは違う状況が続く事がありますから、図鑑やタグ通りではない時期に発芽する事もあります。
二年草・多年草・宿根草と呼ばれるものは、このサイクルが1年で終わりません。冬に地上部が枯れますが根が生きていて、次のサイクルを迎える植物をいいます。
▼一年草のライフサイクル
種子(タネ)から育てる
春まき・秋まき
春と秋、まく時期が違うのは原産地の環境が違う事があげられます。寒さに強いか弱いかで判断すると分かりやすいでしょう。
春まきは熱帯・亜熱帯地方原産が多いので気温が上がった春にまきます。寒さに弱いため「非耐寒性一年草」と呼ばれますよ。それとは逆に、秋まきは寒さに強いため「耐寒性一年草」と呼ばれます。
秋まきは30℃以上では発芽しないものが多いので、秋を感じるようになった9月以降にまきます。あまり寒すぎると発芽しにくいので、なるべく10月上旬位までを目安にしましょう。
種子まき時期の代表例
◆春まき
・アサガオ・コスモス・サルビア・マリーゴールド・ヒマワリ・ジニア・ヒャクニチソウ
◆秋まき
・パンジー・デージー・ヤグルマギク・ハボタン・キンセンカ・スイートピー
種子(タネ)選びのコツ
種子の形や大きさの外見的な見極めも必要ですが、肝心なのは種子本来の持つ生命力です。種を採取してから何年も経ったものや、種子の保存方法が不十分な場合は期待できません。種の保存は、乾燥・寒さに当てる・光を遮断する事が大事です。(詳細は種子の保存環境や容器へ)
小さな種子の場合、水に入れて浮くものは見送ります。採取したら、新鮮なうちにまくようにしましょう。
種子(タネ)まきの環境
種子をまく鉢は素焼き鉢が最適ですよ。素焼き鉢は通気性や保水性が良く温度も安定しやすいためです。発芽に向けて水やりをする時、底から水分を吸わせるのにも好都合なのです。
5号(直径15センチ)程度の底の浅い平鉢があればベスト。プラスチックやガラスなどの通気性の無い器は水分過多になりがちなので気を付けます。
用土は消毒した清潔なものを使います。ピートモスとバーミキュライトを同じ量混ぜ合わせたものもおすすめ。軽くて細かいので風で飛ばないようにしましょう。
無菌。水苔などを堆積して腐熟させたもの。最初は水分を吸い込みにくくて扱いにくいですが、数分で染み込みます。保水性や保肥性が高い用土です。酸性度が強いのでツツジやベリーに加えて使います。
◆バーミキュライト
無菌。乾燥した状態では空気が入って軽く、水を含むと保水性が高くなります。根に十分に水を供給することができるため、植物を育てる時に効果を発揮。乾燥しやすいハンギング用土にも混ぜて使われます。
種まき用の鉢や用土を揃えるのが大変な場合は、種まき用のキットがあります。サカタのタネ・ジフィーシリーズが便利。ヨーロッパ産の良質ピートモスを使った種まき用土が入っています。多くの園芸家が愛用していますよ。
種子(タネ)のまき方
種子は発芽後を考えて散らばるように平均にまきます。密集していると苗が充実しません。間引くときに大変なだけではなく、隣り合った植物の根や葉が絡んで弱々しく育ってしまいます。
土をかぶせる?かぶせない?
まいた後で迷うのが、土をかぶせる必要があるかどうかですね。これを「覆土(ふくど)」といいます。覆土は発芽するときに光が必要がどうかで判断します。
ペチュニア、プリムラ、コリウスなどは発芽に光が必要なので覆土をしません。これを「好光性(こうこうせい)種子」といいますよ。その逆に、光があると芽が出ない「嫌光性(けんこうせい)種子」があります。
覆土(土をかぶせる)するかどうかは発芽の大事なポイントなので必ずチェックしましょう。
◆好光性種子の例:土をかぶせない
・カランコエ・キンギョソウ・セイヨウオダマキ・コリウス・ナデシコ・プリムラ・ペチュニア
◆嫌光性種子の例:土をかぶせる
・ニチニチソウ・ヒャクニチソウ・クロタネソウ・ハゲイトウ・ラークスパー
種子まき後の水やり方法と期間は?
大きな種子ならば、そのまま上から水やりをしても良いですが、小さな種子の場合は流れてしまったり、土の中に埋もれてしまったりします。種子をまいた表面はそのまま触れず、鉢の底に水をつけて下から吸わせる方法が確実です。
発芽まで絶対に乾燥しないように気をつけましょう。表面が乾かないように新聞紙などで覆って保護します。
発芽までの期間はたいてい1週間前後。発芽したら日に当てて育てます。日光不足だと、ひょろひょろと成長(徒長・とちょう)してしまいます。
本葉が出たら小さなポリポットなどに移植をします。株元がしっかりしてきたら肥料を与え、柔らかい日当たりで育てます。育てた苗は土を崩さないよう、丁寧に植え付けます。
最初に出た葉の後から出てくる葉の事。最初の葉は発芽に必要な養分が含まれています。この葉は二葉の他に細長い一枚の葉のものがあります。この最初の葉を切ってしまうと、その先の成長が充実しないので大事にしましょう。
鉢への植え付けと肥料
あらかじめ育てる植物に合った用土を入れた鉢を用意しておきます。
このとき緩効性(かんこうせい)肥料も混ぜておきましょう。早く成長してほしいと多めに肥料を入れてしまうと逆効果になるので分量を守ります。
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◆緩効性(かんこうせい)肥料とは
ゆっくりと効果が表れる肥料。根が肥料焼けを起こしにくい。植え付けの時に土に混ぜたり、成長してから土の上に乗せて追肥するときにも使います。粒のタイプは大きさが色々あるので植える鉢に合わせて選びます。
その中で主に有機質を使ったものを遅効性(ちこうせい)肥料とも呼びます。室内に取り込んで育てる植物の場合、有機質のものは使わないほうが良いでしょう。肥料を購入するときに成分をチェック。植物や動物の死骸、排泄物などを原料にしているので悪臭がする場合があります(悪臭のない無臭肥料も出ています)。
植え付け後はたっぷりとお水をあげます。その後は何度も湿らす程度のお水ではなく、メリハリのある水やりを。
本来の季節ではない強い陽射しや長雨がある事があります。植えたばかりの苗は弱いので注意しましょう。とはいえあまり過保護にせず、なるべく自然の環境にまかせますが、不安な場合は軒下の風通し良い場所へ避難させるなどして様子を見ましょう。
植え付け後の手入れ
一年草の多くはお花を咲かせるので十分な日当たりが必要です。風通しが良い場所に置いて育てます。
咲き終わったら、こまめに花殻を摘み取る事で病害虫や株元の蒸れを防ぐ事が出来ます。傷んだ葉や茎も一緒に取りましょう。消毒したハサミを使うと安心です。
鉢植えの場合は移動が出来ますね。環境を変えられるメリットを生かして育てます。長く咲く種類は、2か月に1度は肥料を追肥して栄養不足を解消させると充実しますよ。
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種子の保存環境や容器
花が終わり、地上部の葉や茎が枯れ始めると種子が充実してきます。茶色くなってきたら頃合いです。はじけて飛んではじけてしまうものは、軽くてメッシュになっている小袋(キッチンで使う水切りネットなど)で包んでおくと便利。
種子が採れたら、次のサイクルに種蒔きをするために保存します。より長く良い状態で種子を扱うには、乾燥した状態で10℃以下の低温で、光を遮断して保存しましょう。
紙の封筒に入れて、種類と年月などをメモしておき光を遮断します。乾燥剤とともに茶筒などの密封容器に入れて冷蔵庫の野菜室へ。「乾燥・低温・光の遮断」が大事です。
種子から育てる醍醐味
一年草の寿命は短いので、お気に入りの植物に出会ったら種子を採りたいと思いますよね。ただし、種子や植え付けの状態が良かったとしても前回と同じ育ち方をするとは限りません。ヒョロヒョロと間延びしたり、花が冴えなかったりと思わずガッカリしてしまう場合もあります。
とはいえ期待どおりの結果にならずとも、種子から育てる喜びがあります。意外な発見や出会いが醍醐味。次のワンサイクルを楽しむ程度に捉えましょう。