お花の色のなかでも「青色」は人を惹きつけますね。空や海を連想させる神秘的な色。エジプトで作られた世界初の顔料は青色ですし、日本画でも青色は貴重とされてきました。
気品があり、涼やかで豊かなイメージです。となると、お花の女王である「バラ」も青色がありそうです。実際のところどうなのでしょうか。
青色の花は昔も今も特別な存在
まず「青い花」として連想する植物は何ですか。私が先日、青い色で感動したのは、「メドーセージ」です。
穏やかな秋の陽射しの中、細い首が優しく揺れていました。深い海のような、まっすぐな「青色」。自然に大きくなった株でした。
「青色」はサムシングブルーやお供えにも使われており、神聖な意味もあります。
青い色のバラは自然界に存在しない
その青色とイメージを思い浮かべた時、ふと・・・お花の女王「バラ」の青色って、自然界では見た事が無いと思いだしたのです。不思議だと思いませんか。
そう。青色は憧れです。
そこで、サントリーが遺伝子操作で青いバラを作りました。
サントリーのブルーローズ
当時は、不可能を可能にした!と話題になりました。
フラワーショウか何かだったと思いますが・・・ガラスケースに入った生花を目にしたのを覚えてます。
「青」と呼ぶには薄い色でしたが、世界で初めて「遺伝子レベルで」青い色素を花弁にほぼ100%含ませたバラ。見慣れてないせいか何となく違和感がありました。
濃い青色のバラは人工色素
ちなみに・・・時々、鮮やかな濃い青色のバラを見かけますが、それは人工的に色素を吸わせているので、真っ青で咲いているわけではありません。
プリザーブドでも濃い青色が使われます。
バラは、なぜ「青色」で咲かないのか
バラはなぜ青い色で咲かないのでしょうか。調べたところ、もともと青色の色素が花弁に存在しないからだそうです。
要するに、長い年月の繁殖によりバラ自身が「青色」は不要だと決めたのです。
以下はサントリーのHPから
この図で右側、「デルフィニジン」がバラが持っていない色素です。
バラにとっては、シアニジンとペラルゴニジンという暖色系の色が種の保存に最適だったのでしょう。バラといえば「赤」と思い浮かべるように、赤の美しさは格別です。
これは人間で言うと、O型とA型をいくら掛け合わせてもB型が出ないみたいなものではないかと思います。そんな単純な事じゃないかもしれませんが。
「バラにとって「青」は繁殖させてくれる媒介者(花粉を運ぶ蝶や蜂など)に人気が無かった。だから遺伝子から排除した」・・・という事になります。
青色の色素「デルフィニジン」
さて、この青色の「デルフィニジン」ってどんな色でしょう。なんだか聞き覚えのある言葉ですね。「デルフィニウム」の事でしょうか!?
バラが持っていない青色色素「デルフィニジン」ってどんな色素?
デルフィニジン(Delphinidin)は、アントシアニジンの一種であり、植物の主要な色素であり、また抗酸化物質である。デルフィニジンは、スミレ属やデルフィニウム属の花弁の青色の原因となり、またカベルネ・ソーヴィニヨンの原料となるブドウの赤紫色の原因ともなっている。クランベリーやコンコード (ブドウ)、ザクロにも含まれる。
デルフィニウム属の花弁の青色がデルフィニジンとは頷けます。とても美しい青。
そして、赤ワインのカベルネソーヴィニヨンの色素だという点も納得。あの赤紫色は神秘的ですからね。
誰のために咲くのか
ではなぜ、バラは青色の色素を持たないのでしょう。花が咲く目的は種の保存のためですよね。自分が綺麗でいたい為ではありません。
先程もちょっと触れましたが・・・青色がどんなに美しくとも、媒介者(花粉を運ぶ蝶や蜂など)が来てくれなければ、青色を持つ必要が無いわけです。
花色だけではなく、姿や香りもそうですね。葉がまんべんなくお日様があたるようになっているのも、栄養を蓄えて生きるためです。
必要な条件を残して咲く究極の美
無駄がないことは究極の美。だから、人が遺伝子を操作した青いバラ自身はどう思ってるんだろうとかと考えます。バラにとっては迷惑な変化かもしれません。
とはいえ、今まで天候や外敵で様々な変化があった事でしょう。種の保存を邪魔しないのならば、長い時間かけて受け入れてくれると願いたい。繋がる命の未来は誰にも分かりません。
昔も今も人を魅了する「青色」。
青い色素を持つお花に出会ったら、その美しさを感じたいところです。
その後、サントリーは青いシクラメンを咲かせることも成功しました。青色の色素はどこまで進歩するのでしょう。
今後も注目したい花色です。