矢車菊(コーンフラワー)
ようやく秋めいて、一年草の種をまく季節になりました。矢車菊もその1つ。秋に種をまくと春にお花をつけてくれますね。今回は矢車菊にまつわる小さなお話をご紹介です。
原種は一重で青紫色「コーンフラワーブルー」
矢車菊を最初に目にしたとき、青色の深さに圧倒された事を覚えています。
海のような、空のすがすがしさのような濃淡。
矢車菊の別名は「コーンフラワー」。その青の美しさから、最上級サファイアを「コーンフラワーブルー」とも呼びます。エベレストに次ぐ高峰で有名なカラコルム山脈で、19世紀末にほんの数年間だけ採掘された宝石です。
伝説のカシミール産サファイヤを表して呼ばれる表現です。
サファイアの中でもこの名前が付くのは特別な美しさというわけです。薄くて艶っぽい花びらが上品。それほどの美しさなら原種はどんな色だったのでしょうか。
原種は「青紫色」で、花びらは一重です。そこから白・ピンク・八重・・・と栽培されて現在まで至ります。今見かける矢車菊は八重でカラフルなものが多いですね。
一重で風に揺れる姿の方が「矢車」という言葉にぴったりに思います。
野原に青紫色の矢車菊が咲き乱れる様子を想像・・・そよ風が吹いたなら、海のさざ波のように美しいことでしょう。
紀元前のエジプトにも咲いていた青い花
矢車菊といえば、ツタンカーメンの棺に入っていた事でも有名ですね。王妃アンケセナーメンが棺に入れたものだとされ、現代も発掘されたお花が残されています。
紀元前3000年にも咲いていたんですね。そのさざ波のように美しく揺れる野原から摘み取って棺に入れたんでしょうか。何千年も経ってるのに残っているとはすごいですよね。
エジプトで「青」は特別な色で、エジプシャンブルーともよばれるほどです。本当にツタンカーメンのお墓に入っていたかどうかは疑わしい点もあるようですが、当時の習慣として棺にお花を入れていた事は分かっています。
故人にお花をたむける気持ちは、どんな時代でも変わらないのですね。
矢車草から矢車菊へ
「矢車菊」は以前「矢車草」とも呼ばれていました。
「ユキノシタ科の矢車草」と区別するため、現在は「矢車菊」で統一されています。
葉がこいのぼりに添える矢車に似ていることから名づけられたんですって。
形状が全く違いますね。
コーンフラワーブルーは鉢植えでも育てられます。エディブルフラワーだと食べられますよ。紀元前エジプトの野原を想像しながら育てるのも楽しそうです。